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最高裁判所第三小法廷 昭和26年(オ)570号 判決 1954年2月16日

主文

原判決を破棄する。

本件を名古屋高等裁判所に差戻す。

理由

上告代理人石田伊太郎の上告理由(後記)について。

原審は被上告人の商業帳簿である甲第一号証の記載その他証人の供述を綜合し、本件当事者間に取引せられた木材はすべて公定価格で売買されたものと認定した。しかし木材の公定価格は、その材種、品等に従い本件取引当時は、昭和一八年八月二五日農林省告示四六九号、昭和二三年一〇月一一日物価庁告示一〇一五号及び同年一二月二四日同庁告示一二五九号により定められているのであるから、当事者間においてその公定価格の点につき争がある以上、先ず当事者間に取引せられた木材の材種、品等を確定した上右の告示を適用し、その価格と現実に定められた売買価格とを照合してその公定価格違反なりや否やを確定すべく、事ここに出でず単に証人の証言等により漫然公定価格違反にあらずと認定するが如きは許されないものといわなければならない。そして前記甲第一号証記載の木材(被上告人主張の取引木材で、その材種、数量、価格については上告人もこれを争わないこと記録上明らかである。)につき、その材種毎にその売買価格と公定価格とを照合すると、昭和二四年一月二四日の取引に係る杉並四分板九寸小節外二三件の坪、束または石単価は、その材種を仮りに一等品と見るも、その公定価格を超過していること明らかであるから、本件木材中少くとも右の部分については、公定価格を超過するものというべく、これを公定価格違反にあらずとした原判決は違法であつて破棄を免れない。

よつて民訴四〇七条に従い裁判官全員一致の意見により主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 井上登 裁判官 島 保 裁判官 河村又介 裁判官 小林俊三 裁判官 本村善太郎)

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